部門紹介

消化器センター [日本外科学会外科専門医制度関連施設]
[日本消化器外科学会専門医制度関連施設]
[日本大腸肛門病学会関連施設]

食道に静脈瘤が出来ても初めはそれ自体による痛みや違和感などはなく、自覚症状はほとんどありません。多くは内視鏡検査ではじめてその存在が明らかにされるのです。しかし、静脈瘤が大きくなり一度破裂すると、大量の吐血や下血(タール便)を引き起こしてしまいます。
大量に吐血すると、まず出血性ショック等の生命にかかわる状態となるため、救急処置が必要となります。更に救命処置がうまくいって、出血が止まったとしても、大量の出血のために肝不全に至り、再び命が脅かされることになりかねません。
よって、肝硬変の患者さんは、内視鏡の設備がある消化器内科等で定期的に内視鏡検査をお受けになって、静脈瘤の有無を確認しておくことが大切です。もし、静脈瘤が発見されたら、その程度、即ち破裂・出血する危険性のある静脈瘤なのかを医師は判断し、必要であれば早期治療(静脈瘤からの出血を持期的・予防的にコントロール)を行います。

内視鏡治療

内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL(endoscopic variceal ligation;)

まず内視鏡を口より挿入し、その後、内視鏡に沿わせて、オーバーチューブという内視鏡より大きめの管を口から挿入します。その後、オーバーチューブを残し、内視鏡を抜きゴムのリング(Oリング)を先端に取り付けた内視鏡をオーバーチューブを通して静脈瘤まで挿入し、静脈瘤を吸引した後リングを引っかけて結紮します。これにより血流は阻害され、静脈瘤は壊死し、脱落します。一回の手技で複数個のリングを食道胃接合部かららせん状にかけていきます。以前はEISが食道静脈瘤治療の主流でしたが、EVLが開発されて以来、第一選択の治療法としてEVLがおこなわれるようになりました。EVLはEISに比べて手技が比較的容易で、緊急出血例でも使われています。
ただし、オーバーチューブ挿入時の上部食道の裂傷やリング落下による出血、更にリングの掛けかけ方次第では食道狭窄などに注意が必要です。

PA Deviceのメカニズム 白色矢印:結紮した静脈瘤、赤色矢印:Oリング

内視鏡的硬化療法EIS(endoscopic injection sclerotherapy;)

食道静脈瘤に対して、内視鏡的に血管(静脈瘤)の内外に小さな針を刺して、そこから界面活性剤を注入し、静脈瘤の出血(破裂)を防止します。

血管(静脈瘤)内注入:オルダミンを使用
→血管内に血栓を作り、食道静脈瘤や供給路を閉塞させる。
(胃静脈瘤の場合は血流が豊富であり、ヒストアクリルと言う瞬間接着剤を使用する事もあります)
血管(静脈瘤)外注入:エトキシスクレロールを使用
→血管外投与を行い、周囲の線維化により血流を遮断する

患者さんはEIS中、通常の内視鏡検査より内視鏡を長く挿入されていますので、少々苦痛やストレスをお感じになる可能性があります。また、EISの際の硬化剤注入後、胸が少し痛く感じることがあるかもしれません。
EISの合併症として、発熱、食道穿孔、腎不全、肺梗塞、食道狭窄などが考えられます。

 EO・AS 併用法の手技